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高血圧治療の大いなる誤解 その3 [高血圧]

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上のグラフは、「その2」のグラフの拡大なのですが、これを「その2」の解説の通り「そうかあ」と受け入れるとすれば、少しナイーブ過ぎますね。というか本当は「そうかあと受け入れるべき」なんです。例えば、実はそんなに原発性アルドステロン症(PA)は珍しくなく沢山居るんだという間違った説を信じていませんか?(笑い)

何度もこのblogでも述べていますが、やっぱりPAはそんなに多くないです。もしPAは多い派の言う通り「PAはありふれた高血圧疾患」だすると上のように分布曲線右側の高血圧のすそ野が下がったりはしません。分布曲線、つまり正規分布に異質な集団があれば、一峰性にはなりません。PAが多数あればそのPA集団のために二峰性になるはずです。

有名なIntersalt Studyで、上のような分布曲線のシフトが観察されています。左側に位置するのが塩分をほとんどとらないYanomamo Indiansで、右側に位置するのがMississippi blacksとなっています。単純な減塩などの食生活の変化でPAの高血圧程度が変化するはずはないので、もしPAが沢山居るならその集団の峰があるはずです。

そんな峰が無いわけですから、PAはそんなに多くないのです。そういうと「PAは多い派」は峰を形成するほどの数では無いと言いそうですが、じゃあどれくらい多いの?と疑問になりますなあ。「なんだよPAが多いって説に騙されたのかよ?」と言うなら、そうです騙されたのです。「疑え、疑え、信じるものは騙される」が鉄則です(笑い)。

ところで高血圧分布曲線の左へのシフトに伴う高血圧のすそ野の低下、そして平均付近の峰がより高くなるという現象はもっと重要なことを示唆しています。


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NO NAME

はじめまして。通りすがりに記事を見つけました。疫学の話題、大変勉強になります。さて、PAが多いかどうかは不明としか言いようがないですが、私も"PAが多い派"がいうほどPAを診断するメリットがある(=特別な治療を要する)患者が多いとは思えません(所詮定義の問題?)。しかし、この記事の議論の進め方には賛成できません。"単純な減塩などの食生活の変化でPAの高血圧程度が変化するはずはない"というのは明らかに間違った認識です。PAはclassicalな食塩感受性高血圧で、PA集団は一般高血圧患者集団よりも食塩感受性は高い(aldoの作用を考えれば当然)ので減塩すると一般患者集団よりもむしろ血圧がよく下がります(実際には罹病期間に応じた血管、心筋のリモデリングが起きるので単純ではないですがそれは一般集団でも同様)。その2の記事の通り左方偏移が減塩を中心とする(とは書いてなかったですが、明らかに最も効果がある要素ですよね)生活習慣改善によるとすれば、減塩治療によってPA集団が顕在化することは"理論的には”ないと思います。
by NO NAME (2015-04-05 19:20) 

MrBlue

NO NAMEさんコメントありがとうございます。なるほどそういう考え方もありますね。ですが、PAについてはClinical HypertensionのKaplanによれば、精査すれば臨床的に問題のない軽度の?PAもあるが、それは無視していればいいと述べています。私はこの臨床家としてのKaplanの考え方に賛成です。減塩して正常化?するPAなどほっておけばいいのです。通常の治療でどうしても降圧しない高血圧を精査し治療するのが二次性高血圧治療の考え方でしょう。
by MrBlue (2015-04-06 07:40) 

MrBlue

ところで私は何例かPA診ていますが、単純な減塩だけで血圧が下った例はなかったと思いますがね、、、、二次性高血圧が減塩だけで降圧したら二次性高血圧じゃない?でしょう、、、、
by MrBlue (2015-04-06 07:45) 

NO NAME

ん〜、議論が噛み合っていないようです。前のコメントにも書きましたが"PA患者は多くないし、通常治療で十分に降圧するようなものは問題にする必要がない"という意見には全く異論はありません。問題なのは議論の進め方でPAの"治療抵抗性”の中身です。あたかも減塩に全く反応しない一群の患者が独立にいるかのような議論ですが、この議論では"治療抵抗性"と"治療反応性"が混同されています。PAの程度というのは連続性のある変数です。PA患者に減塩にresistantな患者とresponsiveな患者の二種類がいるわけではありません。減塩への反応性は集団としては同様に正規分布をとり、しかも反応性だけでいえばPA集団は一般集団よりresponsiveです。ここが大事なところです。aldosteroneが高血圧を発症する理由は腎でのsodium再吸収の亢進によるというのは一般に受け入れられる主張だと思います(たとえば低食塩食を与えられたラットではaldosteroneを投与してもほとんど血圧上昇が起きません)。減塩によってaldosterone分泌が亢進し、その分減塩の作用が減弱する可能性のある一般患者に対し、PA患者ではaldosteroneの作用がある程度飽和している(もともと捨てている食塩が少ない)ため食塩摂取の減少による降圧作用は大きくなります。ただ元の血圧が高いので結果的に"十分な”降圧にいたらずresistantと診断され易いだけです(ご存知の通りresistantか否かの判断は定義上、治療薬剤数と治療後の血圧の絶対値のみに依存しています。反応性の大小ではありません。)。
"PAが多い派"は"aldosterone自体に血圧の作用を超えた心血管障害作用があって軽度であっても血圧に関わらずPAは特別に治療したほうがよく、軽度のものを診断・治療することに意味はある"という意見で、それに対してKaplan先生が以前から言っているのは"aldosterone自体の長期の傷害作用なんて証明されてない。血圧が大事で、下がらない患者に注目して見てみればそんなにPAなんていない。なので全員にスクリーニングするなんて馬鹿げている”ということです。このこととPA集団が減塩によって突出してくる、という議論とは関係ありません。
なにが言いたいかと言われれば、"高血圧では減塩はとても有効。でもPAならもっと有効。治療抵抗性PA患者にこそ減塩指導を!"ということです(笑)。ちなみにPA患者で減塩を徹底すると低K血症も改善することをしばしば経験します(これはaldosteroneがいくら作用しても集合管まで十分なsodiumが流れてこない限りENaCが十分に働かないことの傍証です。)。実際には治療抵抗性で診断したPAは罹病期間が長く、当然血圧も高く、血管が硬くなっていたり、腎硬化症を合併していることが多かったりで減塩しても下がらなかったり、また減塩すると過剰な低血圧になったり、腎障害を起こしたりすることも多く経験します(この辺が"PA早期積極診断派"の論拠の一部ですね。私自身はそれとコストベネフィットや予測可能性は別だと思っていますが)が、"顕在化したPAだから減塩は効かない。無駄" という意見に対しては、"全く逆である"と主張せざるを得ません。
by NO NAME (2015-04-06 17:41) 

MrBlue

なるほど、そうだとすると、減塩環境ではPAは無くなる?のかな?
by MrBlue (2015-04-06 21:24) 

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