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選択バイアスと交絡のこととcoup de grace [疫学]

今更、疫学の講義をするわけでもなし、でも、ちょっと気になるので。先日、「Enough With the Coffee Research and Other Distractions」という記事を上げました。このタイトルを意訳すると、「珈琲研究やその他お楽しみ疫学研究はもう沢山だよ!」でしょうかね。

珈琲を飲むと全死亡率が減るとか、ワインを飲むと糖尿病予防になるとか色々あります。疫学をかじったかたは判る話しです。そういう方はスキップして下さい。珈琲やワイン(赤ワイン?)の類の疫学研究は沢山あります。でも、お楽しみとして読むくらいでいいですね。緑茶がいいという研究もありますね。

でもね、交絡ありますからね。そもそも、珈琲とか緑茶を飲む層って、豊かな階層が多いですよ。ワインもそうでしょう。米国の疫学研究では平気で所得を問う項目がありますが、日本ではまずタブーでしょうし、学歴も日本ではタブーでしょう。だから日本では補正しようがない。

豊かな階層が嗜好品である珈琲や緑茶を飲むとすれば(豊かで無ければ嗜好品は買えない)、これら嗜好品ではなく豊かな階層だからそもそも病気が少ないということになる。また、よくありますが、飲み過ぎはダメだけど、適正な量、つまり控え目なアルコールは良いともっともらしい論文もありますわな。

でもね、アルコールを飲み過ぎないように気をつける層は、アルコール以外にも健康に留意して、他の食事や体重や運動にも気配りしている。かつ、そこまで気をつける階層とはインテリ層が多く、収入や学歴も高いはず。これも交絡そのもの。

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有名な観察研究として、第二次世界大戦中のフランスのアルコール消費量(ワイン消費量)と死亡率の統計研究があります。第二次世界大戦中のナチスドイツ支配下のフランスではアルコールが消費量が激減して、肝硬変等の死亡率が劇的?に低下した。ヒットラーは禁酒主義者だったね。

あれ?それおかしいだろうと消化器科のドクターは考えるはず。アルコールによる肝硬変は年余がかかるから、高々4〜5年では肝硬変死は減らないだろうと。違うんですね、肝硬変の患者はアルコールを飲み続けると「とどめの一撃」(仏語で coup de grace と言うんですが、論文に出ていた)として吐血やら敗血症やらで亡くなるんですね。それがナチスドイツ支配下のアルコール不自由生活で回避されたんですね。ワインは健康に良い???そうかね?

観察研究はそこから真実が垣間見られる そこが面白い 外科医の友人が最近は飲み屋で、やたらと赤ワインを注文したがるんですよね(日本の飲み屋のワインは高いだけで不味いので私は絶対に注文しないけど)、、、都市伝説信じているのね、でもそのフランスではワイン離れでワイン消費量が年々減ってワイン業者は困っているのよね、、、


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Enough With the Coffee Research and Other Distractions [疫学]

タイトルのようなエッセイコメントがMedscape Cardiologyに載っていました。最近の珈琲を飲むと全死亡率が減るとか心臓死が減るとかの観察研究についての批判です。チョコレートが身体に良いというのも批判していました。疫学ではバイアスや交絡を考慮するのが当然なんですが、まあ未だに面白可笑しい研究発表があるんですね。最後にもうかんべんしてくれよという感じで以下の文がありました。

Remedies
It's unlikely that an opinion column from one doctor will stem the onslaught of wasteful, distracting research studies. But some simple things may help lessen the distraction of overhyped research:

1) Journals could be more restrictive in their acceptance of weak papers and more transparent in listing the weaknesses of a study. Why not put limitations in the abstract?

2) Authors and journals should tone down the press releases. Please. I am far more likely to read and report on a study that exudes honesty in the lead paragraph of a press release.

3) Readers need to be more informed and skeptical about common biases. Think more about confounding factors and reverse causation. And always remember that correlation does not mean causation.

distractions とありますが、まあお楽しみというところで、こういう発表を引用したがるのは「サンマのほんまでっか?」に出て来るしょうもないタレントエセ研究者レベルでしょうね。えっ?貴兄も珈琲やチョコの都市伝説を信じていたんですか?ほんまでっか?情報リテラシーないん?ちゃうか?

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私は赤ワインポリフェノール都市伝説信じているので週に1回ワインデーです
 勿論 嘘です 美味しいから飲むだけ (^o^)






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医療費が高いと死亡率が下がる? [疫学]

タイトルは日経新聞のタイトルのようですが、日経新聞は医療費叩きの急先鋒ですから、言いたいのは、医療費をかけても死亡率はむしろ上がるんだから無駄だと言いたいのか?と思ったりします。まあ、詳しくは日経の記事を読むしか無いでしょう。

ネットにはわざわざグラフで医療費が高くて死亡率も高い地域が赤くなるようになっていて、この地域はアカンとでも言いたいのでしょうか?

https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/health-expenditures-map/?n_cid=DSPRM1489

でも、これは疫学で言う原因なのか?結果なのか判らない横断研究そのものです。医療者なら、死亡率が高いから医療費が高くなると思うでしょうし、だから積極的に健康づくり予防医学を導入しては?となるでしょう。あるいは、これらの地域は収入が低く高齢者が多いかもしれない。それらを補正したらどうなるか?を考えるべきでしょうし、さらに言えば、縦断研究はどうなのか?同じ高齢化率でほぼ同じ収入の地域で、医療費をかけた地域とかけてない地域で数年後に本当に死亡率が違うのか?

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 歳をとったらこの岩に座ろう「じじばば石」 この岩に座れば医療費はかからない!?

追記 その後、日経の記事には高齢化率の補正をかけているようです。日経が述べたいスタンスは、例によって費用対効果ということらしい。医療費高いのに死亡率高いのは費用対効果が悪いのではないか?と、、、でもね、大酒飲んでチェーンスモーカーが多い地域なら医療費も高いし死亡率も高いでしょうなあ、、、卑近な経営論理と医療とは違うんだけどね。それでいて日経は混合医療賛成でしょうから、医療格差も広がり、米国並みに医療費高騰するでしょうなあ、、、、日経は何が言いたいのやら???


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大腸がんと飲酒 [疫学]

先日、外来で診ていた患者さんが大腸がんの手術を終えて帰ってきました。こちらでは高血圧と腎機能低下でフォロー中でした。健診で便潜血が1回だけ陽性でした。で、帰ってくると高血圧も解消して降圧薬フリーとなりました。これは飲酒を止めたせいでしょう。

ところが、本人はそろそろアルコールを再開したいと言うのです。えっ、と思って手術した先生はアルコールはダメと言わなかった?と問うとダメと言われてないと。本当にダメと言われてないのかわかりませんが。飲酒と大腸がんのリスクは有名だと思うのですが、、、、この患者さんは休肝日なしで毎日3合の日本酒を飲んでいて、いつも血圧管理の為に減酒を勧めていた。

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 国立がん研究センターの資料から
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チャリ通勤は死亡率低下 [疫学]

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BMJに自転車通勤は健康だと発表されていました。心臓死もガン死も少なくなるとか。運動すると癌が減るのは昔から言われています。心臓病も減るし。そして徒歩通勤よりも死亡率が減る。とは言いつつ、自転車通勤する人はもともと体力があり、健康的な人が多いですからね。prospective cohort とは言っても選択バイアスがある。random化はかなり困難。

もともと体力のない人や、病気がちの人はマイカー通勤か公共交通機関になる。ところで、英国では自転車通勤を促進する政策が提案されているとか。現在は自転車通勤は全体の数%。日本は現時点でも13%くらいらしい。日本は健康的なんだ。

一週間の走行距離が48キロ以上の自転車通勤ならOKらしい。つまり週5日なら毎日往復10キロ程度。それほどの距離ではない。

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 蔵王山頂付近 こういうチャリの人も居る 健康的かどうかは判らない


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認知症はダイエット飲料がお好き?選択バイアス? [疫学]

CareNetに「Sugar- and Artificially Sweetened Beverages and the Risks of Incident Stroke and Dementia: A Prospective Cohort Study.」の紹介がありました。結論は、「ダイエット飲料で脳卒中・認知症リスクが増加」なんですが。

原文を当たってないのですが、体重では調整してないようです。はっきり言ってダイエット飲料は代替品の味で美味しくない。そんな不味いものをわざわざ飲むひとはワケありでしょう。つまり、初めから太っているとか、医師に減量を勧められているリスク(例えばDM)のひと。

prospective cohort でも、初めから選択バイアスがあるのではないか?と思いますが。やはり健常人にrandomにダイエット飲料と普通の飲料を割り当てないと結論はでないのではないかな?

住民調査などすると、男性の場合は飲酒習慣が全く無い群が不健康だったりします。それは健康を既に害してドクターストップされたり、もう飲めなくなった集団だったりするんですね。で、こういう調査だと少しアルコール飲んだ方が健康度が高いというアホな結果になる。圧倒的にアルコール消費量が少ない女性が男性よりも長生きだという明確な事実を安易に性差だけだと片づける。ありゃ疫学でなくて易学だわ(笑)

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高LDLコレステロールの生命予後は? [疫学]

どこぞの某武田タレント学者が喜びそうなネタですが、LDLコレステロールが高いほど生命予後が良い?という報告がシステマティック・レビューで出たとか。さて?でも高齢者でのデータなんだな。壮年期から高いとこうは行かないでしょう。

透析医療でも、血圧が高いほど長生きだという定説があったんですが、その後の研究では否定されたのですがね。疫学調査はその解釈に注意しないとなあ。LDLコレステロールが高く、既に有病の人々にスタチンを投与しても、高齢者なら、健康でLDLコレステロールのみ高い群よりも、治療でLDLコレステロールが一見下がっている群では、病状的にはもう手遅れで生命予後が悪いとかね、、、

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運動は身体に良い 週末運動戦士でもOK? [疫学]

英国の研究で運動は健康に良く、がんも含めて病気が週1〜2回の運動習慣でも減ると最近報告されました。が、あくまでも週1〜2回と言っても運動習慣としてで、週に150分の運動です。150分?

2時間30分です。これは結構な時間です。週ですから、週末にまとめて150分でもいいのですが、チト長い。1年にすると7800分で、130時間、年間5日間とちょっとぶっ続けに運動すれば良い。長いか?短いか?

ともかく、運動すれば癌も減るし、健康度が上がるのは確かのようです。一方で、中高年の場合は、徐々に軽い運動から始めましょうとあります。

ところで、この手の疫学研究でいつも気になることがあります。一つは元々健康だから運動が続けられたのではないか?という因果関係の問題。そして週末運動戦士とは言え、運動習慣を持つ層は相対的に豊かで健康意識も高いというバイアスがあるのでは?と。

「Association of "Weekend Warrior" and Other Leisure Time Physical Activity Patterns With Risks for All-Cause, Cardiovascular Disease, and Cancer Mortality.」JAMA internal medicine. 2017 Jan 09

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 運動すると痩せるから長生きなのか?

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J カーブや肥満パラドクスの嘘? [疫学]

medscapeねたです。塩分を取れば取るほど死亡率が上がるというリーズナブルな結果がでました。『Sodium Intake and All-Cause Mortality Over 20 Years in the Trials of Hypertension Prevention』( J Am Coll Cardiol 2016; 68:1609-1617.)ですが、結論は『We found an increased risk of mortality for high-sodium intake and a direct relationship with total mortality, even at the lowest levels of sodium intake. These results are consistent with a benefit of reduced sodium and sodium/potassium intake on total mortality over a 20-year period.』で、このリニアーな結果が興味深いです。

今までの研究だと塩分は摂らなすぎるとかえって死亡率が上がるとかのデータもあります。が、どうも変です。生物学的反応は大抵の場合、一方上がりのリニアーか、指数関数的なものです。生物学的に必要な塩分量は極めて少量ですが、それを越してJカーブなどが生じるとは思えません。

ではなぜ観察研究などでJカーブが見られるか?それは、病気を持っているひと、治療中のひとが入ってくるだろうと論じています。病気を既に持っていて塩分制限をしているリスクのあるひとが低塩分摂取の層に入ってきたりするとJカーブの原因になると。

太っている方がかえって健康という肥満パラドクスも同じで、病気で減量しているひとが非肥満の層に入ってくる。つまりJカーブとは選択バイアスの一種じゃないか?と。

しかも、この研究では24時間尿採取のゴールドスタンダードでの塩分摂取量を採用している。これは大変なことです。でも、より詳しく厳格な研究デザイン(つまり病気のひとや治療中のひとを除いて)で、と言うと極めて難しい。3万人から4万人を対象に6年から10年低塩分食と普通食にしておけるかね?と。でもそれ位の規模と年数じゃないと有意差は出ないでしょう。

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t分布のこと [疫学]

 義理の息子は分野は違うが、研究職。最近、社命で統計検定の資格を取れと言われたと。t検定はあの有名なギネスビールのビヤ樽の品質管理のために、いかに少ないサンプル調査で全体の品質を推定するか?という命題のために開発されたと説明し、私はビールを飲むときはそのギネスに敬意を表するためにギネス黒ビールにしていると述べると受けました。

 これがスチューデントのt検定(t分布)。これは本名ゴゼットの偉業ですが、当時は偽名のスチューデントの名で発表された。偽名は社命で本名を使うなと言われたという説がありますが、このt分布は暫く日の目を見なかった。その後に脚光浴びせたのはあの生物統計の大家フィッシャー。

 ゴゼットはその後、出世してロンドンの醸造所の所長になったようですが、勿論、t分布のおかげではなかった。あくまでも優秀な社員として。品質管理は企業秘密ですから、それに関わるものを発表されては困るというスタンスが会社の組織論理です。ゴゼットが亡くなってからギネス社はゴゼットの偉業を知ることになる。

 今晩はギネス黒ビールを飲むかな?


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